Special vol.02 「COPEN Cero COUPE CONCEPT デザイン担当者」インタビュー デザイン部 和田 広文 荒木 栄吏(えいし)

スモールカーの枠のなかで“魅せる”クルマを作るという挑戦

「最初COPEN Coupeを市販化すると聞いた時はビックリしました。『ホントに実現したんだ』って。でも東京オートサロン2016でコンセプトカーを出展したとき、将来的に市販化できないかなと思っていたんですよね」と語る、デザイン部の和田広文。
2015年の夏、和田や荒木らが所属するデザイン部では、翌年1月の東京オートサロン2016に向けたコンセプトカーのデザインに取りかかっていた。そして「COPEN Robe SHOOTING BRAKE CONCEPT」とともに生まれたのが「COPEN Cero COUPE CONCEPT」。
「COPENは、ダイハツがさまざまな思いを込めて作ったクルマ。その世界により広がりを持たせたかった。いくつかアイデアが出たなかで、最終的にSHOOTING BRAKEとCOPEN Coupeの2台になりましたが、COPEN Coupeは、『エレガント&エモーショナル』をデザインテーマに掲げ、軽自動車という小さいクルマの枠のなかでいかにスタイリングを流麗に見せられるかということに挑戦しました」

開発しながら惚れ込んだ ルーフラインの流麗美

和田は現行COPENのチーフデザイナーでもあり、個人的にもこのクルマには強い思い入れがあったという。COPEN Coupeの魅力についてこう語る
「何といってもスタイルの美しさですね。オープンモデルは限られた寸法のなかでルーフを折りたたんで収納する必要があるため、ルーフラインに制限がある。どうしてもスタイルよりも機能が優先されます。その点COPEN Coupeには自由度があり、造形の美しさ、楽しさがより味わえます。大きなラグジュアリーカーでは珍しくないですが、軽自動車という小さなクルマでこの形はなかなかできません」

実際に「COPEN Cero COUPE CONCEPT」のデザインを手がけた荒木は、このルーフラインがデザインするうえで最も苦心した点であったという。「Cピラーの流れをいかに美しく見せるかがポイントでしたが、特にピラーがボディにのる部分が難しかったですね。光が当たったときの映りこみ、ハイライトがキレイに流れるように心がけました」
ボディへの光の映りこみの美しさは、もともとコペンがこだわっているところでもある。フロントフェンダーからボディサイドにかけてのキャラクターラインとの調和も重要だ。そこで原寸のクレイモデルを作成し、ミリ単位で削って調整していったという。

COPENを愛するユーザーに応えたい 妥協なき決断が生んだ賜物

COPEN Cero COUPE CONCEPT」の制作にあたっては、純然たるショーカーではなく、実現可能なものにしようと決めていたと和田は語る。
「ショーカーと割り切ればどんな形にもできるのですが、市販化するとなった時に実際に作れるもの、作りやすいものにしたかった。そこで既存のCOPENの使えるところはできるだけ使うようにしたんです。それでいてショーカーとして見栄えのする魅力的なものにもしたい。そのさじ加減が難しく、葛藤もありましたね」
実現可能なクルマにしたとはいえ、量産するとなると製造コスト面を含め、さまざまな問題がある。ショーのコンセプトカーがそのまま市販化されることは滅多にない。現実的には実現は難しいと思っていたという。だからこそ、冒頭で触れた驚きがあった。

「正直、市販化にゴーサインがでた後も、最終的にはコンセプトカーとは違うものになるのではと思っていました。しかし実車を見て、想像以上の仕上がりに驚きました。ほぼイメージどおり。よく作ってくれたと思いました」荒木も続けて語る。
「トランクルームへのアクセスは、僕たちも悩んだところでした。面の質にこだわったパネル部には分割線を入れたくはなかった。しかしガラスハッチとすることでその部分もそのまま再現された。美しいルックスに仕上がりましたね」
COPEN Coupeは、お洒落なミドルおよびシルバーエイジ、そして女性にも乗ってもらいたいと語る和田。
「カッコいいクルマを作りたいという私たちデザイナーの思い、そしてクーペというスタイルを求めるお客様の声に応え、支持いただいた美しいデザインを生かしたいという開発者の思い。それらが形となった、唯一無二のクルマです。オーナーの手に届くのを今からワクワクしています」