Special vol.01 「COPEN Coupe 車両開発担当者」インタビュー グローバルCS企画部 松下 和彦 和田 秀之

かっこよさをそのままに実車化したかった

「東京オートサロン2016で皆様からご好評をいただいた『COPEN Cero COUPE CONCEPT』のオリジナルデザインを、できるだけそのまま実現したかったのです」と語る、車両開発担当の松下和彦。今回のCOPEN Coupeの企画は「あの『COPEN Cero COUPE CONCEPT』の実車がほしい」というファンの声に応えたいという想いからすべてが始まったという。
「コンセプトカーの時点で社内外の反応はとてもよかった。『カッコいい』『これなら売れる』『このクルマがほしい』というコメントをたくさん見ました。もちろん私自身もカッコいいと思いましたし、絶対に世に出したいと思いました。会社のCOPENに対する理解もあり、この企画に対するGOサインが出た時は、本当にうれしかったです」

2019年は現行COPEN発売から5周年にあたる年。同車の幅を広げるモデルを発売することは、COPEN5周年を盛り上げるうえでちょうどよい機会でもあった。
「ダイハツは、コンパクトカーメーカーとして、利便性、楽しさ、広がりを常に追求しています。クルマを移動の手段としてだけではなく、所有する喜びを味わえる、カッコいいクルマを作りたかった。COPEN Coupeはそれにふさわしいクルマです」という松下。
また商品企画に携わった和田秀之もこう語る。
「COPENはダイハツのフラッグシップカーであり、特別なクルマです。COPEN というクルマをもっと知ってほしい、ダイハツ車に乗ったことがないお客様とも、COPEN Coupeを通じて接点を増やしたいと考えました。また、COPENの特徴である骨格+樹脂外板という構造がもたらしたデザインの自由度の高さがあったからこそ、外板を着せ替えるDRESS-FORMATIONだけではなく、このようなクーペスタイルも実現できました」

デザインを最重視するべきか
熟考してたどり着いた“美”とは

企画は2018年1月からスタートしたが、実車化にあたり、まず「何を取って、何を捨てるか」ということに悩んだという。
「たとえばトランクルームへのアクセスは、コンセプトカーのデザインを忠実に再現するために、ガラスハッチとしましたが、通常のトランクリッドに比べると、どうしても荷物の出し入れはしにくくなる。使い勝手よりもデザインを重視したクルマは外車などでは見られますが、ユーザーの利便性を重視するダイハツとしてはどうか。非常に葛藤しました」と松下は語る。しかし最終的にはオリジナルのデザインを可能な限り忠実に再現するため、すべてスタイル重視で設計することとなった。
「このCoupeはルーフからピラー、テールにかけての美しいラインが最大の魅力。そこがオートサロンでも支持されたので、できる限り余計な線は入れたくなかったのです」。結果、Bピラー周り、ハイマウントストップランプ部などを除き、ほぼコンセプトカーどおりのスタイリングが実現した。

限定だからこその付加価値でより特別感を出したい。
製品化への飽くなき挑戦

松下は、現行COPENの骨格となる「D-Frame」を設計した人物でもある。勝手を知ったクルマであったことも大きかった。とはいえ、製品化に際してはさまざまな困難もあった。「ハードルーフ部は、構想の当初からカーボン(炭素繊維強化プラスチック)にしようと決めていました。大量生産には向かないものの、この大きなハードルーフをフルカーボンにすることで、剛性を確保しつつ、約20kgもの軽量化が実現しました。
また通常のCOPENのオープンルーフは3分割で構成されていますが、Coupeは前から後ろまで一体のハードルーフになるので、構造上の遊びも少なく、車体への組み付けは、これまで以上の部品精度が求められました」と、松下は語る。
「さらに200台限定ならではのプレミアム感を出すために、特別装備の一つとしてフロントガラスには、世界初の【曇りにくいガラス(AGC社 eXeview)】を採用しました。
他にも、このCOPEN Coupeを完成させるにあたっては、ハードルーフ、ガラスハッチ、クォーターガラス、各種取付部品など、Coupe専用部品の製作に、多くの部品メーカー様にご協力いただき感謝しています」

これまでにないクルマで、
新しい世界へ出かける喜びを

「1年間は本当に短かった」と口を揃えて語る二人。このCOPEN Coupeは、必ず待ち望んでいるお客様がいる。必ず発売させたい。その使命感が二人のモチベーションを高めた。
「このクルマの魅力は、何といっても流麗なスタイル。ご購入されたオーナー様には、新しい場所にもどんどん出かけていただき、ショーウインドウに映るCOPEN Coupeを眺めて、うっとりしていただきたいですね」という和田。続けて松下もこう語る。
「200台限定ですが、ダイハツのモノづくりに対する想いが詰まった特別なクルマです。200名のオーナー様それぞれがCOPEN Coupeのある生活に、優越感を感じていただき、末長く愛し、乗り続けていただきたいですね」